細胞の意思を尊重する(各細胞の期待する甘えの要求を満たす)ことが、「情調のしつけ」(子どもの情緒の安定を目的とするしつけ。
あとで詳述)を受け入れる土台の強化となるのです。
いわゆる「五感」より重要な影響力を持つ「体性感覚」は、私たちの全身の皮膚に広がっており、外部環境からの刺激のよい悪いを分別し、よいものは受け入れて記憶し、悪いものは受け入れを拒否しようとします。
これが「心の免疫力」の作られ方です。
心をしつけるとは、この「免疫力」(耐性)を強化することなのです。
「抱きしめ授乳」や「添い寝」、「だっこ」に「おんぶ」などが、すぐれた子育てしつけであるのは、体性感覚によい快感を与え体に記憶させていくからです。
「体性感覚」とは全身の皮膚の下にある「刺激の受容体」のことですが、温度刺激、痔痛刺激、圧迫刺激などによってそれぞれ受容体が違います。
なかでも体感子育てに大きな役割を果たすのが「パチニ小体」という受容体です。
パチニ小体は、全身の触感覚が受けた快感刺激を専門に受け取り、脊髄をとおして小脳に記憶させます。
すると小脳は、その記憶を全身の細胞群に再配分します。
このよい記憶こそ、子どもの心をよい方向にしつける源泉となるのです。
ただ、このパチニ小体は他の受容体に比較して皮下の少々深いところ(皮膚下三ミリほど) にあるので、刺激するためにはある程度の圧力が必要であることを理解しましょう。
ここまでお話ししたとおり、子どもの心身の成長過程とは、細胞の分裂増殖のプロセスそのものです。
細胞の増殖によい環境を整え、その意思に強い生存力と免疫性を与えるのが、「子育てしつけ」の大切な目的だということを覚えてください。
しつけには「情調」と「体調」と「親和」の領域がある子育てやしつけのよい悪いについて語るとき、私たちは、すぐ環境のよい悪いを問題にしますが、この環境という言葉ほどあいまいで無責任な表現はありません。
地域社会や教育の現場、はては自然環境などと、つぎつぎと漠然とした対象を探しだします。
ついには思想哲学や政治体制まで持ちだします。
みなさん、それぞれの子育て・教育の責任回避のために、原因を他に押しつけているのではないでしょうか。
子どもの知能教育や健康のレベルについては、たしかに多くの要因があるため特定の責任者不明となりがちです。
まわりの環境の影響で変化することもあるでしょう。
しかし、子どもの心の育つ時期の周産期(受胎から出産後の四年間)までの影響なら、あやふやな環境責任論では逃げられません。
胎児期から乳幼児期そして児童期と、幼い子どもを取り巻く環境は必ず特定できなくてはならないのです。
だれが子どもを保護し、どのように育てるか。
責任者不在では、子どもは心の迷子となってしまいます。
きて、ここでしつけの中身について考えてみましょう。
さきほどふれたように、しつけには三つの領域があります。
一つは情調性( エグザティシズム)「情緒の自制力」のしつけです。
二つめは体調性「身体の節制力」のしつけで、三つめが親和性「社会との調和力」のしつけです。
簡単にしつけといっても、それぞれのしつけの領域にはこのような違いがあるのです。
ここではその考え方を説明しましょう。
子どもの心の「情調」と「体調」と「親和」の三つの領域はよく混同されがちです。
「情調」のしつけと、「体調」と「親和」のしつけは、とくにはっきりと区別しましょう。
体調のしつけや親和のしつけは、あるていど、お母さんでなくてもできますから、お父さんや身近な人に協力を頼むのもいいことです。
しかし、情調性のしつけだけはお母さんの仕事です。
情調性のしつけというのは、子どもの情緒の安定を目標にします。
もともと子どもの情緒は、本人の感性と性格のかかわり合いから生まれたものですが、これが日々の対人関係と環境の影響を受けて絶えず変化し、安定したり不安定になったりしています。
子どもは情緒不安定になるとしぐさや動作に出てきます。
絶えず頭をかきむしる、すぐ目をパチパチする、ほほをピクピクさせる、じっとできない、いうことを聞かない、目線を合わせない、人を無視する、したいことに執着する、わがままをふり回す、すぐに泣きわめくなどです。
この安定と不安定の波をできるだけ小さくし、情緒性のパニックを引き起こさないよう3ラに安定させるのが情調性のしつけですが、この不安は「甘えの不足」の欲求不満からきていますから、お母さんが原因を理解して与えるのが最適なのです。
そうすることで、この波はだんだん小さくなっていきます。
それが情緒の安定を永続させるしつけになるのです。
情調性のしつけはタッチング、つまり感動の触れ合いを多く与えるのが基本です。
「甘えを満たす」が情調性のしつけのキーワードです。
つぎに子ども自身の体調性のしつけですが、これが意外となりゆきまかせのお母さんがいます。
子どもの体の整え方というよりは、親の思いどおりにならないとただ怒りまくるという仕方では、まず、いいしつけにはなりません。
体調性のしつけがうまくいっていない例としては、野菜嫌いなどの好き嫌いの多さ、乱暴な食べ方、遊び食い、おむつ離れの遅れ、排便習慣の拒否、風呂嫌い、洗面嫌いや着がえを嫌がるなどがあります。
体調性のしつけが難しいときは、乳幼児期のお母さんのしつけ、つまり伝え方のつまずきが、子どもの体に不快な体感として残っている場合が多いのです。
体を整えるしつけは、お母さんが行為して見せて覚えさせるのが肝要です。
「やさしく何度も繰り返し見せる」が体調性のしつけのキーワードです。
つぎに、親和性のしつけです。
情調のしつけに似たところもありますが、これは子どもと周囲の人や物事のかかわり方で、その動きや行為のよい悪いに関係します。
友だちに噛みついたり、頭の毛を引っ張ったり、おもちゃをだれにも貸さない、友だちやまわりの人と親和しないかかわり方、モノや道具を粗末にする、といった人や動物や物事に反抗的な習慣を変え、思いやりとやさしさのある人柄を身につけさせるのが親和性のしつけとなります。
親和性のしつけはブリ―ディング、つまり養育するが基本です。
「快感経験の蓄積」が親和性のしつけのキーワードです。
幼児が目覚めたとき、お母さんが「00ちゃんおはよう」といって抱きしめ、ははずりして愛を伝えます。
これが情調性のしつけの一つです。
また洗面や着替えのとき、幼児自身でできることは、時間がかかっても子を出さない、やさしく繰り返し手本を見せ、あせらずに待つ。
これが体調性のしつけの一つです。
食事中、幼児がわざと茶碗を壊したときなど、お母さんは叱らず「あーあ、茶碗ちゃんが壊れて、痛い痛いとかわいそう」といって涙ぐみます。
幼児は、お母さんを悲しませないようにしようと心に納めます。
これが親和性のしつけの一つです。
この三つのしつけが不十分のまま、子どもが成長し集団社会(保育園や幼稚園、小学校) への参加が始まると、いろいろなルールにぶつかります。
急にこのルールに従わせようと強制しても解決しません。
これはしつけとは違う訓練で築くことですから。
それは基礎工事をしないで建築物を建てるようなものです。
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